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あの日に還りたい
西洋占星術が暴く
貴方に訪れる運命
[14]
私は封筒に視線を落とした。それは私あてに来た手紙だった。送り主は田村みさえ。はじめて目にする手紙だった。しかも、すでに開封されていた。
私は手紙を取りだし広げた。庭から、妻がルノーを発進させる音が聞こえてきたが、私は妻たちのあとを追おうという気にはなれなかった。私の能力をもってすれば、ふたりの関係はまだ修復可能だと、私はまだこのときは愚かにもそう信じていたのである。
手紙には、みさえの私に対する思慕の情が切々としたためられていた。
あきれたことに、私が終始彼女に対して冷淡にふるまいつづけていたにもかかわらず、みさえは私への恋慕の炎をけっしてかき消そうとはしなかったというのだ。しかし、みさえは二十九歳のとき周囲のすすめに折れて、編集者であった現在の夫のもとに嫁ぐことになる。そのときでさえ、彼女の表現を借りれば「恋の火を心の灰に埋め」ただけなのだという。
だが、その埋め火はうすうす夫の感づくところであったらしい。ふたりのあいだは徐々に冷え冷えとしたものになっていった。夫婦のあいだに決定的な亀裂が走ったのは、みさえが経済誌から切り抜いておいた、私の写真を夫が見つけたときだ。以来、夫の暴力の絶える夜はなかったという。
最後に、妻という身でありながらほかの男を恋い慕うのは罪なのでしょうか、とあった。
おそらく、みさえはこの手紙を投函してからすぐに、睡眠薬をあおったのであろう。
要するにこれは、田村みさえの遺書であり、私へのラブレターであり、私に対する怨嗟の手紙でもあるというわけだ。
私はみさえの情念を怖いと思った。と同時に愛しいとも思った。不思議といとわしいという感情はわき出てはこなかった。
ただ、グラフ誌に載ったみさえの美貌を目にしていなかったら、私がこんなふうに思ったかどうか疑わしいのだが。
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